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株式上場後初めての減収、鉄道、ホテルなどに打撃    九州旅客鉄道・青柳俊彦社長


今期決算は依然「未定」

九州旅客鉄道㈱(福岡市博多区博多駅前3丁目、青柳俊彦社長)は本誌9月号のインタビューに応じ、新型コロナウイルス感染拡大による業績面の影響について次のように話した。
―新型コロナウイルス感染拡大による影響について。
青柳 4月7日に緊急事態宣言が出された直後が最も影響を受け、各地で運営するホテルをはじめ、駅ビルでも臨時休業することになった。この期間の売り上げは、鉄道収入も大幅に減少し対前年比で約8割から9割減。緊急事態宣言解除後は、鉄道、商業施設それぞれで人の流れが少しは戻ってきているが、依然として厳しい状況が続いている。7月中旬時点で通勤、通学客が平時の約8割にまで回復している印象。新幹線利用を中心に中長期距離移動の乗降客が対前年の約5割と低調。商業施設は、6月の来場者が対前年比で約6割、各テナントの売り上げは約7割にまでは回復。感染者が増えている博多や小倉ではそれぞれ来場者が約5割、収入は約6割と依然として苦戦が続いている。
―これまで大きな収入源だったホテルは。
青柳 入国制限で外国人観光客が激減しているほか、国内全体で旅行へのマインドが低調なことや、企業の出張が減るなど逆風が続く。鹿児島や大分のように地方によっては稼働率が対前年比で5割程度にまで回復。しかし、東京や福岡は稼働率が1割程度のところもあり苦戦している状況。
特にインバウンドはコロナが収束しても2、3年は外国人観光客の姿が多く見られるのに時間を要することになると思う。好調な需要が元に戻るのには4、5年はかかると見ている。
―長期化が予測されるが、収入減への対応策は。
青柳 金融機関からの新規借り入れで1千億円、社積発行で400億円を調達。また、1200億円規模の融資枠(コミットメントライン)を設定。今後も手元の資金不足が懸念されてくるため、あらゆる形で事業を運営していく上で必要な資金を調達することを念頭に置いている。
―2020年3月期の連結決算は、売上高が前期比1・8%減の4326億4400万円、経常利益は同23・9%減の506億1300万円、当期純利益は同36%減の314億9500万円と減収減益。どのように評価しているか。
青柳 前期(20年3月期)の減収減益は株式上場後初めて。当初の予測では「増収減益」で、この「減益」は固定資産税の軽減措置が終了した影響による費用増加が影響することによるものだったが、昨年まで全体の業績は非常に好調で、鉄道収入は過去最高にまで登る勢いで、全体で増益になる期待感もあった。
しかし、2月以降新型コロナウイルス感染拡大によって人の流れが少しずつ止まり、インバウンド客が激減したことも響き、最終的に売上高も減収に。この2月、3月が昨年並みの数字であれば、かなりいい決算になっていた。
ー今期第1四半期は。
青柳 鉄道旅客運輸収入の減少を受け、前期比38・4%減の618億4800万円、経常利益はマイナス152億円、最終損益は51億円の赤字です。
―今期の見通しは。
青柳 今後の収入動向等が極めて不透明であることから、業績予想と年間配当金は、今期の第1四半期決算公表時点で「未定」としている。
―7月中旬時点での対前年比の合計売り上げは。
青柳 現状、前年同月比の5割程度、年間ベースでは累計で対前年比30%程度に止まっている。仮に今後、急速に収入が戻ったとしても、人の流れが戻ってくることを前提に見て、対前年比約50%の減収になるのではと見ていますが、全体の見通しを出すのはまだまだ難しい状況。リーマンショック時でも鉄道収入は対前年比10%まで減収はなかったので、今回のコロナ禍は鉄道事業にとって首を閉まられた状況であると痛感している。

2020年8月25日発行