INTERVIEW
- 新任トップ
「風通しの良い弁護士会に」/多川一成 福岡県弁護士会長
Tag:
福岡県弁護士会の2020年度会長に4月1日付で、大名総合法律事務所の多川一成代表弁護士が就任した(任期:2020年4月1日~2021年3月31日)。現在、所属弁護士1350人を超える同会。コロナ禍で対応や裁判を取り巻く環境、今後の抱負ついて聞いた。
後進育成にも意欲
―ご就任されてすぐのコロナ禍となりましたね。
多川 戸惑いはありましたね。弁護士会職員は業務時間の短縮などで対応し、対外的な面談相談を5月末までは電話相談に切り替えました。また、新型コロナウイルスに関する無料電話相談「新型コロナ110番」も企画し、6月末まで毎週火、木曜日に実施しています。事業者からは資金繰り、労務関係、債務履行など、労働者からは賃金未払い、解雇、給与補償などの相談が寄せられています。また、自粛生活に付随したDVや子どもの人権問題などの相談対応も強化しました。
対外的なフォーラムやセミナーはしばらく開催が難しくなりますが、内部的な会議はWebを使ってできます。特殊な状況下なので、しっかり情報共有をしながら連携をとっていきたいですね。
―裁判を取り巻く環境などに変化はありましたか。
多川 福岡地方裁判所は今年に入って、争点整理手続きにWeb会議システムを試行的に導入するなど、民事裁判の「IT化」をこれから進めていく流れができていました。実際に今、試行されている裁判所が7カ所あります。遠方の代理人と顔を見ながら対話できるといった点や、裁判所に来る時間や費用が軽減されるというメリットがありますが、このコロナ禍によってさらに必要性が高まり活用が進んでいくのではないでしょうか。
―裁判のIT化とは、近未来的ですね。
多川 はい。法律業界では今、オンライン紛争解決(ODR)というものも注目されてきているんです。オンライン技術を含めたITテクノロジーを活用して紛争を解決するしくみで、海外では欧米を中心にすでに普及しています。日本でも最近は、ネット相談を受け付け、オン
ラインでプロセスを管理し、AIで分析して解決に活用するといった実証実験も進んでいます。
一方で、ITは地方の弁護士にとって有効に活用できる反面、脅威となる面もあります。遠方からすべて相談できるようになってしまうので、このバランスのとり方はこれからの課題です。
―これまでのご経歴を教えてください。
多川 当会ではこれまでに、常議員、広報委員長、司法修習委員長、総務委員長などのほか、06年4月総務事務局長、14年4月副会長兼福岡部会長を務めました。特に長く従事してきたのが、司法修習委員会です。毎年、司法試験を合格した修習生が法曹資格を得るために裁判所、検察署、弁護士会でそれぞれ1カ月法律実務を学ぶのですが、そのお世話をする委員会です。修習生にとっては、法曹制度の根幹に関わる大切な期間ですので、やりがいを持って取り組んできました。また、昨年3月にオープンした新弁護士会館の竣工記念誌編集室長なども務めました。
―今後の抱負をお願いします。
多川 まずは、市民からのより一層の信頼を得られる活動をしていくのはもちろんですが、弁護士会として意見表明を積極的にしていきたいと考えています。弁護士および弁護士会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現という重大な使命が課されています。社会秩序の維持や法律制度の改善のために必要と考えられときは、積極的に意見表明をしていくつもりです。
また、後進の育成も重要な使命です。司法修習委員会として長く修習生に関わってきましたので、一層その思いを強く持っています。修習期間というのは、弁護士、裁判官、検察と、それぞれの道に進む人が一緒に研修を受ける唯一の期間であり、修習生たちのこれからの法曹人生の土台になります。誠心誠意向き合い、風通しの良い弁護士会を作っていきたいと考えています。
―ありがとうございました。