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㈱サニックス
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資源循環型ビジネスへシフト加速
同社のプラスチック資源開発工場。破砕したプラスチック(燃料)が圧縮梱包されている。廃プラスチック燃料は苫小牧発電所(下写真)などに供給される |
景気後退受けHS、ES部門で効率化追求
昨年9月以降、米国サブプライムローン問題に端を発した金融危機による世界的な景気後退は、直接的な影響が少ないと思われていた環境衛生管理の分野にも波及した。
㈱サニックスの09年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比3・6%減の194億300万円。経常損益は同3億100万円の黒字から5億2400万円の損失となった。
同社の3事業部門のうち、主力のHS(ホーム・サニテーション)事業部門は、個人消費の落ち込みにより、高単価商品の「基礎補修・補強工事」が計画比で減収。また、契約の先送りなども影響した。
ビル・マンションなどを対象とするES(エスタブリッシュメント・サニテーション)事業部門では、金融危機に伴う不動産・建設業界の混乱の影響をまともに受けた形となった。
環境資源開発事業部門も、製造業の減産などを背景に電力需要減からの売電単価下落、廃プラスチック加工処理の搬入単価下落、有機廃液処理の搬入量の計画比減が響いた。
これらの要因を受けて、09年3月期は増収増益の見通しから下方修正を余儀なくされた同社。ただ、反転に向かうための対策は早い。
HS事業部門は、第3四半期に入り前年を下回った生産性を回復させるために、適正人員に戻し収益性改善を図る。3月1日には、関西・中京地区の不採算店舗合計6店舗を統廃合した。
ES事業部門も、これまで全国に5地区本部17拠点あった店舗のうち13店舗を閉鎖。東京、名古屋、福岡エリアの4店舗に統合・再編することで、年間約5億円の固定費削減を実現し、“選択と集中”で最終利益の最大化を目指す。
北九州市若松区響町1丁目のひびき工場(有機廃液処理工場)
環境資源開発事業部門で09年度、初の黒字確保見込む
今後の対策のうち、宗政社長が「世の中にとっても必要なもの。これからが一番のチャンス」と期待を込めているのが環境資源開発事業部門。
廃プラスチック加工処理事業、発電・売電事業、有機廃液処理事業からなる資源循環型ビジネスだ。
大規模な先行投資を経て、廃プラスチック専焼の苫小牧発電所で発電を開始したのが03年。以来、故障や火災といった困難を幾度となく乗り越えてきた。現在の苫小牧発電所は70%程度の出力で安定操業を続けており、今後はさらに高出力の連続安定運転を図っていく考えだ。
その一環で、これまで様々なトラブルの要因となっていたプラスチック燃料中に含まれる異物を取り除くシステムを、前工程のラインに新規導入。プラスチック燃料の前処理能力を増強した。
また、2月には日本卸電力取引所(JEPX)への会員登録を済ませ、3月から子会社・㈱サニックスエナジーが苫小牧発電所で発電した電力を直接JEPXで取引している。これにより、従来に比べて条件の良い売電取引が可能となった。
廃プラスチック加工処理事業においても、現在、製紙メーカーなど複数社からプラスチック燃料の受け入れオファーがあるという。
これらを受けて、09年度は環境資源開発事業部門で初の黒字確保も見えてきた。
「先行投資が続いたこの5年間は、なかなか水面から上がることは出来なかった。しかし、これからは違う。少しずつだが追い風が吹いてきた」(宗政社長)。
廃プラ専焼の苫小牧発電所(北海道苫小牧市)
中期戦略でも環境部門がエース級の位置付けに
現在、同社は10年度までの新中期経営計画「Spring Plan 2010」に取り組んでいる。
この新中計は、“追い風”が吹いてきた環境資源開発事業部門へのシフトが最大のテーマだ。これまでの主力のHS事業部門の利益率を維持しながら、環境資源開発事業部門で営業利益率13%を目指す。
同社の資源循環型ビジネスが、いよいよエース級に位置付けられた。
宗政 伸一 社長 長崎県佐世保市出身。1949年12月16日生まれの59歳 |
企業DATA
【所在地】〒812-0013福岡市博多区博多駅東2-1-23
【TEL】092-436-8870
【FAX】092-436-8871
【創業】1975年4月
【設立】1978年9月
【資本金】140億4183万円(08年12月末)
【事業内容】総合環境衛生管理
【年商】265億1,000万円(08年3月期)
【代表者】宗政伸一
【従業員】1673人(08年12月末)
【出先】HS(一般家庭向け)部門7地区本部65拠点ES(法人向け)部門4拠点 環境資源開発部門4支店16工場
【関連会社】㈱サンエイム、㈱エネルギー総合開発研究所、㈱サニックスエナジー、 ㈱サニックス・ソフトウェア・デザイン
【URL】http://sanix.jp
(ふくおか経済EX2009年)