FEATURE

ふくおか経済EX 2009

㈱西鉄ストア


設立40周年迎える今期を「第二の創業期」に

連日数多くの地域住民が集う複合商業施設「スピナガーデン大手町」の核テナント・スピナマート大手町店(北九州市小倉北区大手町)

スピナとの“統合効果”発揮が第一目標

福岡県内を中心に、駅前で“おなじみ”の食品スーパーを運営する㈱西鉄ストア。設立40周年という節目を迎える今期は、単に時節的な意味合いだけではなく、企業体制の面でも大きな変化を遂げ、二重の意味での「転機」の年となる。
4月1日、同社は北九州市を中心に食品スーパーを展開する西鉄グループの㈱スピナのスーパーマーケット事業を統合した。これまで、05年に㈱西鉄タミー、08年は㈱ダイクスとグループ小売事業の統合を繰り返してきた同社だが、その中でもスピナは最大規模の企業であり、店舗数は39店から55店に、今期の売上高は約490億円(08年2月期)から700億円超へ達する見込みだ。まさに、数年にわたる統合事業の“仕上げ”ともいえる大型統合であり、西鉄グループにおける同社の存在感と責任も、さらに大きなものとなる。
しかし近年、国内では業種を問わず様々な企業間の合併・統廃合が繰り返されてきたが、そのすべてが順調に滑り出しを迎えたわけではない。だからこそ、室園社長は今期の第一目標に「スピナとの統合を円滑に進め、最大限に統合効果を発揮すること」を掲げる。

スピナが得意分野とする水産品売り場(写真左)と酒類売り場(写真右)

両社の異なる“得意分野”でシナジーを

統合後の実務業務面において、室園社長は「お客様に迷惑をかけない」ことをまず、大前提に据える。
スピナが西鉄グループの傘下に入ったのが06年。それから約3年間、システム面、商品面、人事面など、様々な側面から着々と統合の準備を進めてきた。だが、やはり実務レベルで初めて顕在化する課題もある。それら起こりうる課題をできる限り事前に想定し、対応するための“備え”にも力を注いできた。例えば、スピナで販売するプライベートブランドは同社加盟のCGC(コーペラティブチェーン)商品に総入れ替えとなるが、これらをスムースに来客者に浸透させるためには、告知だけではなく、現場での柔軟な対応が必要となる。そういった実務面での課題を見据えて「お客様に不備が出ないよう微細な調整も必要になるだろう」と室園社長は気を引き締める。
そして、円滑に動き始めた後は、両社の“統合効果”を引き出すことが最大の課題となる。同業種とはいえ、やはり双方の“強み”には明確な違いがある。西鉄ストアは、県内に広く出店している点から広域展開の手法を熟知しており、駅前立地など比較的小規模店舗の運営にも強い。品目では一般食品や精肉が売れ筋という。一方、スピナは比較的大規模店舗を運営するノウハウを有しており、北九州市圏内に集中して出店していたことから、本部と店舗の連携が密という強みを持つ。品目では酒類や水産物の販売比率が高い。
お互いの得意分野を掛け合わせ、苦手分野を補完できれば、各店の運営基盤・販売戦略の大幅な底上げにつながることは間違いない。室園社長も「仕入れなどの形式上の統合に終わらず、オペレーション面での相乗効果を引き出していきたい」と統合効果の発揮に向けて意気込む。

西鉄ストアの展開する業態のひとつ、「レガネット」の最新店舗であるレガネット東那珂店(福岡市博多区東那珂)

時代のニーズ汲んだ商品を提供

昨年は金融危機に伴う不況で、多くの業界の経営環境が悪化した。食品スーパー業界の環境に変化はあるかと室園社長に聞くと「大方において、底堅く推移している」と業況について説明する。確かに、高額商品などに消費低迷の影響が見られるが、逆に売り上げがプラスに転じている品目もあるという。
まず、主力商品の「食品」全般が好調だ。景気低迷に伴い、「外食」の客足が細っており、その分「内食」(家庭での食事)に需要がシフト、スーパーでの家庭用食材の販売が伸びた。また、高額商品が低迷する分、ディスカウント商品の売れ行きは明るく、特にお得感のあるCGC商品は、今期約30%もの伸びを示した。
レガネット、ダイクス、そしてスピナと複数の業態を展開する同社だが、各店ごとに時代に合わせて商品構成を変化させることで「大部分の既存店で前年並みの売り上げを確保できている」と室園社長は話す。加えて、こういった新しい“ニーズ”を全面に打ち出すセール、レイアウトのノウハウは、西鉄ストアはじめ今回統合したスピナも非常に来客者からの評価が高い。いかなる時代であっても積極的に市場のニーズを汲み取り、現場に素早くフィードバックすることで、不況下にあってもさらなる成長を期すことができている。
40周年を迎えた今期を、室園社長は「当社にとって第二の創業期」と位置付ける。統合効果で生まれる新たなノウハウを武器に、西鉄ストアは次のステージへと進む。

室園 正雄 社長
1945年10月8日生まれの63歳。八女市出身。慶應義塾大学商学部卒。69年西日本鉄道に入社。97年に専務として西鉄ストアに入り、00年に同社社長に就任。趣味はゴルフ

 

企業DATA
【所在地】福岡市中央区大名1-4-1NDビル7F
【TEL】092-712-2331
【FAX】092-715-1480
【設立】1969年6月【資本金】4億2000万円
【事業内容】スーパーマーケット等の経営(「にしてつストア」「レガネット」「ダイクス」「スピナ」)
【年商】489億6400万円(08年2月)
【代表者】室園正雄(むろぞの・まさお)
【従業員】2889人(08年3月現在)
【店舗】食品スーパー55店、ホームセンター2店
【関連企業】(親会社)西日本鉄道㈱<100%>
【URL】http://www.nishitetsu-store.jp/

採用情報
●募集職種:販売員
●応募資格:2010年度卒業予定者
●採用実績:08年度24人、09年度33人
●採用予定:10年度15人
●問い合わせ先:TEL092-712-2331
●担  当:総務部 人事課 田邊・吉谷

(ふくおか経済EX2009年)