FEATURE

ふくおか経済EX 2009

㈱アキラ水産


「魚に親しみを」、“魚食普及”を推進し“内部充実”で足固め

本社が入居する長浜3丁目の福岡市鮮魚市場会館

市場開放イベントの仕掛人

午前9時前、通常取引が終わった長浜の鮮魚市場敷地内で、にわかに市民の長蛇の列ができる。普段、市場に入ることが出来ない彼らの目的は、もちろん“魚”。市場が開くと同時に、目的の品を目指して、一斉に売場の中に流れ込んでいく—。
毎月第2土曜日に市場が一般に開放されるイベント「市民感謝デー」で、お馴染みとなった風景だ。
「まずは、魚に接してもらわないと」と語るのは、安部泰宏㈱アキラ水産社長。「市民感謝デー」を主催する福岡魚食普及推進協議会の副会長兼販売部会長として、毎回、同イベントを先頭に立って取り仕切る。
安部社長ら市場関係者にとって、特に最近の若年層の魚離れは、大きな懸念材料だ。それを食い止めようと、昨年春、検討委員会で“市場開放”を事業として決めた。7月に「第1回市民感謝デー」を開催。全国でも珍しい取り組みで、関係者全員にとっても挑戦だった。
イベントでは、約5400㎡ある仲卸売場棟内で仲卸業者ら約40店舗がそれぞれ威勢の良い掛け声で、新鮮な魚介類・加工品を販売する。
一番西側に売場があるアキラ水産でもアジ、タイ、サバ、ブリをはじめ季節ごとに捕れたさまざまな魚を袋いっぱいに詰めて、手頃な料金で提供している。「奥の店は、今回何がそろっているのか」と、開場前の行列で待ちわびる声も聞かれ、既に多くの人に認知されている。
市場内では、魚のことをもっと知ってもらおうと、販売以外にも色々な催しを企画。アキラ水産の売場では、市民に魚の名前と姿を覚えてもらうため展示コーナーを設置し、毎回約10種類の魚を展示している。
そのほかにも、模擬競り体験イベントやさばき方実演、つかみ取り大会、マグロの解体ショーなども実施。「新鮮な魚が手に入るし、貴重な体験もできる」と市民の反応も上々だ。
初回こそ、見学目的の来場者が多かったが、回を重ねるごとに買い物目的の客が増加。現在は1万3000人以上が訪れ、毎回大盛況となっている。
「市民の皆さんに魚にもっと親しんで欲しい。これからも全市場をあげて魚食普及に取り組んでいく」と、安部社長は意気込みをみせる。

市民感謝デーにて、目当ての魚を探す市民でごった返すアキラ水産の売場

展示コーナーにある魚を珍しそうに見つめる市民たち

ISO22000取得目指す

社内では、09年を「内部充実を図る年」と位置付ける。スタッフの人材育成を強化していくと同時に、安心・安全の食品提供を第一とし、これまで以上に本物志向を追求していく考えだ。
中でも、同社は06年に鮮魚仲卸業として全国で初めてISO9001を認証取得しているが、今後は、食品安全マネジメントシステムのISO22000について、近い将来での認証取得を目指していく。
「水産物を扱う現場でも、他の食品と同様に品質、衛生、鮮度管理は重要な課題。ISOに関する理解をこれまで以上に深めて、社員への意識づけを高めていきたい」(安部社長)。
グループ組織についても、「内部充実」を図る。07年に、海産物加工品製造・販売の㈱味飯をグループ化すると同時に、冷凍、塩干専門の海産物販売の㈱一心を設立。一旦、グループを4社体制に拡大したが、昨年、その㈱味飯を「アキラ水産加工事業部」に再編した。元々、味飯のグループ化は製造ノウハウを蓄積するために行ったもの。これが後に「アキラの鯛茶」、「アキラの鯖茶」といったオリジナル製品の商品化につながった。今回、さらなる効率化追求のために加工事業部への再編を実施した。

変わらない「顧客第一」精神

前期まで38期連続増収を達成。09年3月期ではグループ年商90億円を見込んでいる。
堅実経営の背景にあるのは、創業店の「明市場」以来90年間受け継がれている「顧客第一」と「薄利多売」の精神だ。
100年に一度の危機とも言われている最近の経済状況の中でも、“明”のDNAとも言える、それら顧客目線は、今後も変わらない。

安部 泰宏 社長
福岡市出身。1939年3月29日生まれの70歳。福岡大学付属大濠高校卒。趣味はゴルフ。全国水産物卸組合連合会副会長。九州地区水産物卸組合連合会会長。福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長。福岡商工会議所議員。地場経済界に広く交流を持ち、04年7月から福岡城西ロータリークラブ会長を務め、05年4月には藍綬褒章を受章した。06年12月に発足したソフトバンクホークス・斉藤和巳投手の後援会長も務める

 

企業DATA
【所在地】〒810-0072福岡市中央区長浜3-11-3-711
【TEL】092-711-6601
【FAX】092-715-3293
【E-Mail】akirasuisan@wind.ocn.ne.jp
【創業】1918(大正7)年
【設立】1947年4月
【資本金】2,000万円
【事業内容】(福岡市中央卸売市場)鮮魚仲卸全般
【年商】80億円(グループ)
【代表者】安部泰宏
【従業員】105人(グループ)
【関連会社】㈱コウトク水産、㈱一心
【URL】http://akirasuisan.com

(ふくおか経済EX2009年)