FEATURE

ふくおか経済EX 2010

㈱カンサイ


グループ6社のシナジー効果発揮で“設備の総合商社”としての機能を強化

02年3月に“住宅・ビル設備の総合商社”への飛躍を掲げて社名変更して以来、新しい領域に挑戦し続けている電設資材卸売の九州最大手、㈱カンサイ。昨年は3月に同業の九州昭和㈱(北九州市八幡西区)を、10月には住設機器販売や住宅リフォームの㈱カンサイしんこう(福岡市博多区)をグループに加え、カンサイグループ6社体制となった。
折からの建設不況で10年度も前の2年以上に厳しい業界環境が予想されるものの、将来を見渡せば、オール電化商品や太陽光発電システム、LED照明、燃料電池など、そのフィールドはますます広がろうとしている。忍田勉社長は「ここ数年は我慢の時期。新年度はこれまで以上に“筋肉質”の会社づくりを目指す。そして、前年度同様に販売会社としての原点に立ち、本業の電材卸を中心に細かなことを着実にこなすとともに、グループのシナジー効果を発揮し、“住宅・ビル設備の総合商社”としての機能を肉付けしていきたい」と新たな成長軌道を思い描く。

九州内で営業所ネットワークを着々と拡大

忍田社長が就任した95年当時は売上高が115億円ほどにすぎなかった同社。98年度以降の10期連続増収で07年度に200億円を突破したのは、販売会社の原点という「細かいことを着実に」やってきたからにほかならない。それを可能にしたのが、地域に密着した営業所の展開だ。創業以来の大改革として05年度から開始した『10年計画』でも、その大きな柱の1つに九州100拠点構想を掲げ、同業では例を見ないきめ細かなサービス体制の充実を図っている。
電気工事会社など約3,000社と取引し、それまでも福岡県内15カ所をはじめ九州に23カ所の営業所を配置していたが、シェア25%程度を握る福岡以外の地区はまだまだ開拓の余地が多かった。その上で、「それこそ倉庫として使ってもらうような、もっと顧客に身近な存在に」という発想のもと、積極的な営業所展開に着手。05年度以降、熊本北、長崎、唐津、八女、大分、田川に順次開設してきた。今後も空白エリアへの開設で点から線へ、線から面へと九州でその営業所ネットワークを確実に広げていく方針だ。
もちろん無茶な急拡大を図っているわけではなく、そこにはもう1つ明確な意図がある。忍田社長は「営業所開設は空白エリアのシェアアップだけでなく、所長ポストの増設で若手も登用していき、社員の意欲向上と社内の活性化を図るのが狙い」と説明する。実力が備われば、20〜30代でも営業所長ポストに就け、「権限と責任」を持たせることで、個人の成長を促し、会社もまた成長していこうということなのだ。

毎年7月に3日間開催する共創展「カンサイフェア」。今年は節目の30回目を迎える

電材卸での50余年の実績もとに
“住宅・ビル設備の総合商社”へ

また同社の成長を支えるのは、営業所展開だけでなく、将来への布石を打つ新領域への挑戦であり、とりわけ大きかったのが、“住宅・ビル設備の総合商社”への飛躍を掲げた02年3月の社名変更だ。
“電気設備資材”のイメージが強かった「関西電業㈱」からの社名変更で、半世紀にわたる電材での経験と実績をベースに“住宅・ビル設備の総合商社を目指す”方向性を内外に示すと、実際に大手住宅設備機器メーカーと相次ぎ代理店契約を締結。さらに05年10月には「住設事業部」を新設し、翌年6月に同事業部の独立した事務所を博多区南八幡町に開設した。その後、東京や福岡を中心にキッチンや空調機器からオリジナルキッチン、家具・建具などの納入実績を重ねている。その住設事業部は、同社が子会社化した住宅リフォーム会社、㈱木の家しんこうと昨年10月に統合し、「㈱カンサイしんこう」として、成長性が高いリフォーム市場を含めた拡大を期している。
他のグループ会社では、08年に50周年を迎えた配電盤・分電盤製造の三葉電機工業㈱はその前年1月に大阪営業所を開設し、11月には新本社屋が完成するなど、業容を拡大。08年2月から忍田社長が社長を兼務してきたが、今年2月に甥の忍田武人常務を社長に昇格させ、より現場に近いトップによるさらなる成長を期している。また防災関連工事などの㈱ロッコウアトム(旧㈱アトム)は、07年7月に電話工事の六興電設㈱と合併し、100ボルト以下の弱電工事をすべて自社施工が可能になった。特に、09年度の販売台数が前年度の3倍を超える勢いで伸びている太陽光発電システムにおいても、その施工能力を存分に発揮している。このほかカンサイ本体と同業である㈱日進商会(北九州市小倉北区)や九州昭和㈱もそれぞれ切磋琢磨しながら、グループとしてのシェア向上に寄与している。

今年3月、公的機関である
大阪中小企業投資育成の投資先に

住宅・ビル設備の総合商社としての肉付けや、グループのシナジー効果発揮とともに10年度力を入れるのが、“筋肉質”の会社づくりだ。元々、財務基盤には定評がある同社だが、業界環境の好転がすぐには見込めないなか、「我慢の時期」と見定め、全社的なコストコントロールをはじめ、社内改革や人材育成に努め、「筋肉をより太くしていく」という。
今年3月19日には、公的投資育成機関である大阪中小企業投資育成から9600万円の投資を受け、うち半分を株式に割り当てた。忍田社長は、「主に自己資本の充実や事業承継対策が目的だが、公的なベンチャーキャピタルの投資先に選ばれたということで、対外的な信用度もそうだが、社員のモチベーション向上にもつながるはず」。こうした備えがあればこそ、安定した経営を可能にし、新たな成長戦略を描けるのに違いない。

忍田 勉 社長
おしだ・つとむ/1948年9月16日生まれの61歳。奈良県大和郡山市で生まれるも1歳時に福岡市に。県立修猶館高校卒—明治学院大学法律学部卒。74年関西電業㈱(現㈱カンサイ)入社。95年2代目社長に就任。趣味はゴルフ(HC20)と仕事

 

企業DATA
所在地 〒812-0007 福岡市博多区東比恵3-32-15
TEL 092-481-9100
FAX 092-474-8365
設立 1948年4月
設立 1954年3月
資本金 9,600万円
事業内容 電設資材・住宅設備機器の卸売
年商 201億円(09年3月期)
代表者 忍田勉
従業員 200人
出先 (営業所・事業部)九州全域31カ所、東京1カ所
関連会社 三葉電機工業㈱ ㈱ロッコウアトム ㈱日進商会 九州昭和㈱ ㈱カンサイしんこう
URL http://www.kansai-dengyo.co.jp

採用情報
募集職種 営業(ルートセールス)・技術営業
応募資格 全学部・全学科
採用実績 09年度17人(大卒15人、専門学校卒3人)、10年度15人(大卒10人、専門学校卒5人)
採用予定 11年度15~20人(大学・短大・専門学校卒)
問合せ先 TEL.092-481-9100
担当 本社総務部 田村

(ふくおか経済EX2010年)