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㈱アキラ水産
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仲卸に加工、小売へ、顧客ニーズを追求
(写真)市場開放「市民感謝デー」にて多くの人でにぎわうアキラ水産の売場
今年で創業93年を迎える地場仲卸大手の㈱アキラ水産。福岡市中央区春吉の柳橋連合市場の前身「明市場」を発祥として、その伝統を受け継ぎ、以来トップを走り続けてきた。
その中で、同社の安部泰宏社長は、“魚食普及”にも力を入れる。
「洋食が増えたことなど、戦後の食生活の変化で、魚を食べることがだんだん少なくなってきた」と指摘する安部社長。戦後に育った世代とその子どもたちなどの魚離れを食い止めようと、自身が会長を務める福岡魚食普及推進協議会が始めたのが長浜の鮮魚市場を一般市民に開放する「市民感謝デー」だ。
“魚食普及”の市場開放が盛況
全国的にも珍しい試みで、2008年7月からスタート。毎月第2土曜日の午前9時から正午までを開放。全長200mの通路2本に41店舗が軒を連ねる売り場へ、お目当ての品々を求める市民がなだれ込む。これまでの累計来場者数は39万5000人。1回あたりの平均では1万2000人を超える。リピーターも多く、今や市民の間ですっかり定着した催し物となった。その盛況ぶりに、全国各地から市場関係者が視察に訪れることも多い。
会場では、魚のさばき方実演、魚の展示、マグロの解体ショーなど様々なイベントが催される。中でも、アキラ水産の売場では、水揚げされたままの魚を箱いっぱいに数種類詰めて販売しており、多くの客でごった返す。売切れるまであっという間だ。そこには、切り身ではなく本来の生の魚、魚の姿を知ってほしいという気持ちが込められている。安部社長は「もっと魚に親しんでもらわないと」と意気込む。
オリジナル明太子の「あきらめんたい」。パッケージを一新した |
専用工場で加工品製造
本業の仲卸では、創業以来「顧客第一」、「薄利多売」という初心を守り、顧客ニーズに対応し続けている。
そして、先述のように食生活の変化で魚をさばいて食べる機会が少ない一般消費者に向けては、加工品の強化で対応している。
同社は07年に鮮魚市場西卸売場棟内に専用工場を設置し、加工業に本格参入。量販店などに向けて魚をさばいておろしたり、洗浄、パッキングまでを施す。市場の「競り場」2階に加工場があることを強みに、鮮度の良い漬け魚や干物といった商品を充実させており、東名阪をはじめ全国に向けて販路を拡大している。
また、異物混入を防ぐ金属探知機、殺菌効果を促す急速冷凍機などを設置。06年には鮮魚仲卸として全国で初めてISO9001の認証を取得するなど、衛生管理、品質管理も徹底している。
全国的に人気の「アキラの鯛茶」
一方で、明太子の「あきらめんたい」、「アキラの鯛茶」、「アキラの鯖茶」といったオリジナル商品も好評だ。
中でも「アキラの鯛茶」は、元々人気商品だったところに、最近、旅客機の機内誌に紹介されたこともあってか、遠くは北海道など全国から問合せが殺到。わざわざ同社本社や市場会館の販売店に買い求めてくる人も多いという。
また、「あきらめんたい」はこのほどパッケージを一新。福岡出身の童画家・西島伊三雄さんのデザインで、子供たちが山笠など地元の祭りを楽しむ模様が描かれており、博多のお土産としての訴求を図る。
「アキラの鯛茶」(左)と「アキラの鯖茶」(右) |
新博多駅ビルに小売店オープン
これらの人気を背景に、このほど、同社のグループ会社が「JR博多シティ」の地下1階「博多小径」内に、オリジナル商品の販売店をオープン。一般消費者に向けた加工品の製造販売に、いよいよ本格的に乗り出した格好だ。
地場仲卸トップの実績に加え、加工、小売へと、顧客ニーズを追求し続けていく姿勢は今後も続く。
安部 泰宏 社長 あべ・やすひろ/福岡市出身。1939年3月29日生まれの72歳。福岡大学付属大濠高校卒。趣味はゴルフ。全国水産物卸組合連合会副会長。九州地区水産物卸組合連合会会長。福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長。福岡魚食普及推進協議会会長。福岡商工会議所議員。地場経済界に広く交流があり、04年7月から福岡城西ロータリークラブ会長を務め、05年4月に藍綬褒章を受章した |
企業DATA
所在地 〒810-0072 福岡市中央区長浜3-11-3-711
TEL 092-711-6601
FAX 092-715-3293
創業 1918年(大正7年)
設立 1947年4月
資本金 2000万円
事業内容 (福岡市中央卸売市場)鮮魚仲卸全般
年商 80億円(グループ)
代表者 安部泰宏
従業員 100人(グループ)
関連会社 ㈱コウトク水産、㈱一心、㈱安部水産、㈱博多ハクヨー
(ふくおか経済EX2011年)