FEATURE

ふくおか経済EX 2012

㈱森鐵工所


創業106年世界が認めるグローバル企業に躍進

タイヤ成型ドラムの生産で世界シェア約3割を占め、30カ国以上に輸出する㈱森鐵工所。1931年にタイヤ成型ドラムの製造に着手し、世界特許を有する高い製品開発力で、世界企業に成長を遂げている。2012年からは、新たにタイヤ成型機の製造に参入し、さらなる飛躍を目指す。

(写真)森鐵工所本社(左上)。製造、開発、営業、三位一体のモノづくり体制(左下)。主力製品のタイヤ成型ドラム「MJX」(右)

世界に羽ばたく技術力

「成型ドラム」とはタイヤ用ゴムを円筒形に形づくる装置で、いわばタイヤ製造の心臓部にあたる。高精度の加工が求められるだけに大手タイヤメーカーでは内製化する動きもあり、中小専業メーカーが生き残るのも至難だ。
こうした中、森鐵工所は創業106年の老舗企業として、歴史と技術力を強みに、タイヤの成型をワンタッチでサイズチェンジできるドラムの開発や、ボタン一つでゴムの巻きつけから取り外しまでを全自動化する製品開発を手掛け、大手タイヤメーカーに輸出している。「現場の要望をどれだけ製品に反映できるかがカギ。効率化、省力化、軽量化を最重視して製品開発を進めてきた」と胸を張る森社長。世界特許を数多くもつ同社の成型ドラムは、30万回の成型にも耐えられ、さらに、特定部品を定期交換することで、30年以上も稼働ができるという。

世界を相手にする製品を手掛ける荒木工場

タイヤ成型機に参入へ

近年、モータリゼーションの広がりでアジア地域にも市場が急拡大。精力的に国際化へと展開してきた同社は、商圏拡大でさらなる飛躍を期する。「市場ニーズをいち早く汲み取っていく」と、同社はこの春から新たに、ドラムを回すモーターやシャフトを一体化した「タイヤ成型機」そのものの生産に乗り出す。
同事業に伴い、5億円を投じ久留米市にある2工場の生産設備を増強する。「新興国の需要拡大で、アジアのタイヤメーカーも付加価値品の生産を強化しており、精度が高ければ十分受け入れられる」(森社長)とし、すでに内製化している大手メーカーにも同製品を積極的に売り込む。
さらに、今後は「久留米地区で条件が整った土地を確保できれば新工場の開設も視野に入れている」と取引拡大による成長戦略を探る。

「元気モノづくり中小企業300社」を受賞

優秀経営者顕彰の研究開発者賞を受賞

2008年には経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」に選ばれるなど、数々の賞を受賞してきた同社だが、同社を世界企業へと育て上げた森社長自身もまた、このほど、日刊工業新聞社の「優秀経営者顕彰」で「研究開発者賞」を受賞し、対外的な評価を受けた。
同賞は、優れた経営手腕で企業を成長させ、日本経済の発展と地域社会に貢献したモノづくり関連の経営者を表彰する。4代目となる森社長は、得意の英語力を生かしたトップセールスで同社の製品を海外に売り込み、世界市場に拡大させるなど輝かしい足跡を残してきた。森社長は「その根底には、モノづくりを伝承する人材がいるから」と穏やかな表情で微笑む。現場では、78歳の熟練工も若手指導に汗を流し、その鋭い視線は、世界特許を持つ同社の技術力の高さを裏付ける。「熟練工の存在を大切に若手技術者の育成に取り組んでいく」とニッチ分野のオンリーワン企業として、躍進する。

森 春樹 社長
もり・はるき/1954年9月6日生まれの57歳、横浜国立大学経営学部経営学科卒業後伊藤忠商事に入社。82年退社し森鐵工所に入社した。技術・営業の両面で現場を経験し07年7月先代社長と養子縁組で森姓になり、同年12月4代目社長に就任。営業を一手に引き受けた1990年以降は海外進出で市場を拡大した

 

企業DATA
所在地 〒830-0049 久留米市大石町18
TEL 0942-35-1266
FAX 0942-35-4422
創業 1906年4月
設立 1934年6月
資本金 2012万円
事業内容 タイヤ成型ドラム製造販売
従業員 約50人
製造拠点 本社工場

採用情報
募集職種 機械設計、技術職
応募資格 機械設計/高専・大卒、CADが使用できる者 技術職/高卒
採用予定 未定
問合せ先 TEL.0942-35-1266
担当 総務課

(ふくおか経済EX2012年)