FEATURE

ふくおか経済EX 2012

室町ケミカル㈱


2017年度中の株式公開に向けチャレンジを持続

医薬品、化学品メーカーの室町ケミカル㈱は全社員の目標に「チャレンジと実現化の努力」を掲げ、20、30代の若手社員一人ひとりに積極的にチャンスを与える独自の人材活用策で急成長を遂げている。

村山 哲朗 社長(右上)
むらやま・てつろう/福岡市出身、1953年4月18日生まれの58歳。福岡大学薬学部卒業後、薬局勤務を経て、83年天洋社薬品工業(株)(現、室町ケミカル(株))入社。開発部長、専務を経て97年4月から代表取締役社長。趣味はスキー、読書、ゴルフ。好きな言葉は“チャレンジ”

(写真左上)高品位尿素水「AdBlue®」の製造、販売事業に取り組む尿素水事業プロジェクトメンバーたち
(左下)「チャレンジと実現化の努力」を全社の目標に掲げ、自由な発想で仕事に取り組む同社スタッフ
(右下)2009年に経営幹部の育成を目的に発足した「経営革新の会」。月に1度、本社会議室でメンバーが活発に意見を交わす

同社が大きな転換期を迎えたのは、今から7年前のこと。従業員が100人を超え、組織が拡大し始めた時に6カ年の中長期計画で売上拡大路線を打ち出し、新規事業を積極的に立ち上げることで急成長を遂げた。同社の成長とともに社員一人ひとりのスキルも高まり、次なるステージへの挑戦が始まった。

高品位尿素水「AdBlue®」の製造スタート

昨年7月に開始した高品位尿素水「AdBlue®(アドブルー)」の製造、販売事業は、顧客の一声を機に立ち上がった。「お客さまを訪問した時に、ディーゼルエンジン車の排出ガス中に含まれる窒素酸化物を低減するため、尿素水を製造できないかと相談され、何とか実現化できないかと思った」と営業1課の平田大介さんは語る。すぐに社内でプレゼンテーションをおこない、昨年1月に「尿素水事業プロジェクト」が始動した。
これまで、いくつもの新規事業を立ち上げてきたが、同プロジェクトは原料尿素の調達、製造、販路の開拓まで1年間で完成させることが求められた。水処理、化学品メーカーとしてのノウハウを生かし、プロジェクトの立ち上げから2カ月後には、尿素水の製造設備を完成させた。「さらにその2カ月後には世界で通用する『AdBlue®』の製造をするための認証監査を受け、合格することができた」とプロジェクトリーダーを務めた同課の諏訪猛さんは語る。「AdBlue®」はJIS規格に適合し、厳選した尿素と同社の水処理技術を生かした純水を原料に使うことで、高品質を保つ。「高い基準を維持するため、原材料の調達に苦戦した。海外から大量にサンプルを取り寄せて、試作品を作り続けた」と塚本康治製造部次長は振り返る。
その後、「AdBlue®」の登録商標を持つドイツ自動車工業会の認定を受け、プロジェクトから半年後の昨年7月に製造を開始した。諏訪さんは「半年間で製品化できたのは、メンバー全員が前倒しで進もうとチャレンジした結果。医薬品メーカーとして、品質には自信がある」と力強く語る。
現在、月に1000リットルの生産体制を整えており、今後は九州地区で2次店を開拓し、販売チャネルを拡大する。同時に、茨城県工場での生産準備も進めており、関東地区への進出も見据えている。

オリジナルサプリメントゼリーに新ラインアップのアイスゼリー

子会社で健康食品の企画、販売に取り組む天洋社薬品㈱が開発した栄養機能食品のスティックゼリーは、OEMの需要を掘り起こし、新規事業から同社の基幹事業へと発展した。
2005年からオリジナル商品の開発に取り組み、これまでにマンゴー味の「ウコンゼリー」、ダマスクローズウォーターを使用し、食べる香水をコンセプトに開発した「ROSE BEAUTY」、青汁が苦手な人や野菜不足の人に向け、パイナップルの果肉を入れて食べやすくした「ぷちぷちパインの青汁ゼリー」を発売している。
2011年10月には、新商品としてヒアルロン酸やセラミドなどの美容成分を配合したイチゴ味のアイスゼリー「ジュエルモイスト」を発売した。企画から商品開発、販売ルートの構築まで一貫して担当した同社の森直香さんは「これまで商品開発に携わっていたが、すべてを一任されたことで営業感覚も養うことができ、貴重な体験だった」と語る。今後は、取扱代理店でのネット通販やカタログ通販などで販売していく。「ツバメの巣やヒアルロン酸などの高級な美容成分をふんだんに使用した、女性には嬉しい自慢の商品ができた。他部署のメンバーも積極的に協力してくれて、完成した時の喜びは今でも忘れない」と笑顔を見せる。

パイナップルの果肉を入れて食べやすくした「ぷちぷちパインの青汁ゼリー」を持つ荒木美穂さん(写真左)とヒアルロン酸やセラミドなどを配合したイチゴ味のアイスゼリー「ジュエルモイスト」開発者の森直香さん(写真右)

株式公開に向け経営基盤強化

新たなチャレンジと並行して、経営基盤の強化にも余念がない。2009年には次世代の経営幹部を育成する「経営革新の会」を発足させたほか、昨年には、経営戦略の中核を担う「経営企画室」を開設した。創業100年を迎える2017年の株式公開に向けて、より一層のスピードで成長していく。

 

企業DATA
所在地 〒836-0895 大牟田市新勝立町1-38-5
TEL 0944-41-2131
FAX 0944-41-2133
URL http://www.muro-chem.co.jp
創業 1917年1月
設立 1947年7月
資本金 6000万円
事業内容 イオン交換樹脂処理、健康食品製造販売、工業用薬品・医薬品製造販売、給排水処理装置製造設計など
年商 40億円(2011年5月期)
従業員 205人
関連会社 天洋社薬品㈱、ムロマチテクノス㈱、室町(上海)商貿有限公司

(ふくおか経済EX2012年)