㈱アキラ水産

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顧客ニーズを追い続けて95年、昨夏には加工場の衛生管理をさらに強化

（写真）市場開放の「市民感謝デー」で魚を求める多くの客でにぎわうアキラ水産の売場

95年前に多くの市民に愛された「明市場」がルーツのアキラ水産。仲卸に転向後もいち早く顧客ニーズを取り込み、量販店対応から加工にも進出。地場トップを走り続けている。昨夏には加工工場を大幅リニューアル。魚食普及にも力を入れる。

来店客がごった返す「明市場」。今のにぎわい（メイン写真）と変わらない。中央左に立っているのは創業者で安部社長の祖父・栄次郎氏

 ルーツは柳橋連合市場の前身「明市場」

毎月第2土曜日の朝9時。長浜魚市場内にあるアキラ水産の売場に、旬の魚がたくさん入った約300個の発砲スチロール箱が積まれる。それを求めて500人以上の人々が列をつくり、スタッフの威勢の良い掛け声に合わせて品定めが始まる。恒例となった魚市場開放イベント「市民感謝デー」でのひとコマだ。
これと同じ光景が95年前にもあった。場所は現在の柳橋連合市場。アキラ水産のルーツ「明市場」だ。店は連日多くの人でごった返し、喧騒の中でスコップですくった魚を客の風呂敷に移す。「はい。○○銭!」と言われた客は代金を払い風呂敷を受け取る。店内は魚を入れていた箱だけが空箱となって瞬く間に積みあがっていく。
「明市場」を創業したのは、現在の安部泰宏アキラ水産社長の祖父・栄次郎氏と伯父の明氏、父の篤助氏の3人。手頃な値段で新鮮な魚が手に入ることが評判を呼び、店は大盛況だった。この頃から薄利多売を信条にし、魚を売った後の空き箱が増える様から“箱儲け”（箱の分だけの儲け）とされ、今でもアキラ水産の伝統になっている。
「明市場」はその後、呉服から食料品までさまざまな品を扱う「明百貨店」へと発展した。

プレミアム干物セットとオリジナル明太子の「あきらめんたい」

変わらない顧客ニーズへの対応

戦争で「明百貨店」を閉めた後、父の篤助氏が天神で営んでいた大型鮮魚店を経て、1960年に仲卸業に転向。この頃から安部社長による舵取りが始まった。
安部社長は当時から顧客ニーズを敏感に察知していく。すぐにでも「スーパーの時代がやってくる」として、量販店向けの品揃えに変更。売上げを拡大させていった。
その後、2000年代に入ってからは、小売店の加工作業の軽減のために自社の専用工場を市場内に設置し、魚をさばいておろす1次加工、2次加工に次いで、洗浄やパッキングまでを施す3次加工までを手掛けるようになる。

昨年リニューアルした人気商品の「アキラの鯛茶」（未販売）

加工場大幅リニューアル

昨年8月には、その専用工場を大幅にリニューアル。同社は06年に鮮魚仲卸としてISO9001を全国で初めて認証取得するなど衛生管理に力を入れてきたが、今回新しくなった工場ではその衛生管理をさらに強化。菌の混入を防ぐための入室前のエアシャワーや、殺菌効果のある空気清浄装置を備えて完全に他と間仕切りした「包装加工室」などを設置。殺菌しながらわずか数時間で1000枚を乾かせる最新の冷風干物用乾燥機もあり、鮮度が売りの「プレミアム干物」シリーズなどを製造している。徹底された衛生環境と加工技術は業界内外で評価されており、全国大手スーパーなどからの引き合いや取引が増えている。
安部社長が常日頃から言っているのが“魚食普及”。同社も仲卸業でありながら、魚を食べてもらうために、また食べやすいように、量販店対応や加工への進出など業容を変化させてきた。前述の「市民感謝デー」も主催団体である福岡魚食普及推進協議会の会長として、広く市民に魚をもっと知ってもらおうとしているものだ。
福岡の食に欠かせない新鮮な魚。そのすばらしさをこれからも伝えていく。

安部 泰宏 社長 あべ・やすひろ／福岡市出身。1939年3月29日生まれの75歳。福岡大学付属大濠高校卒。趣味はゴルフ。全国水産物卸組合連合会副会長。九州地区水産物卸組合連合会会長。福岡市鮮魚仲卸協同組合理事長。福岡魚食普及推進協議会会長。福岡商工会議所議員。地場経済界に広く交流があり、04年7月から福岡城西ロータリークラブ会長。05年4月に藍綬褒章、11年6月に旭日雙光章を受章した

企業DATA
所在地　〒810-0072 福岡市中央区長浜3-11-3-711
ＴＥＬ　092-711-6601
ＦＡＸ　092-715-3293
ＵＲＬ　http://www.akirasuisan.co.jp
創業　1918年（大正7年）
設立　1947年4月
資本金　2,000万円
事業内容　（福岡市中央卸売市場）鮮魚仲卸全般
年商　90億円（グループ）
代表者　安部泰宏
従業員　約90人（グループ）
関連会社　㈱コウトク水産、㈱一心、㈱安部水産、㈱アキラ・トータルプランニング

（ふくおか経済EX2014年）