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低コストの超低温冷凍機を開発  矢山英樹九州大学大学院准教授    来年3月までに会社設立


 九州大学大学院の矢山英樹准教授は、専門技術を応用した低コストの超低温冷凍機開発を進めており、来年3月をめどに会社設立など事業化に向けた準備をしている。
 理学研究院物理学部門の同准教授は、低温の物性実験(低温下での物の量子力学的な効果を調べる実験)を専門としており、物の温度を絶対零度(マイナス273℃)近くまで下げるために必要な、実験用の冷凍機を自作した経験を生かして商品化を進めている。ほぼ絶対零度まで下げるためには液体ヘリウムを使う「希釈冷凍機」が用いられるが、液体ヘリウムは1リットル2,500円ほどの価格で、希釈冷凍機での実験では1回に10数万円から40万円近くのコストがかかり、機械の価格も数千万円という。矢山准教授が開発しているのは、機械式と希釈冷凍の2方式を組み合わせることで高価な液体ヘリウムを消費せず、通常の希釈冷凍機の40分の1のランニングコストでほぼ絶対零度を実現できる「無冷媒希釈冷凍機」。また、希釈冷凍機は一部屋を占有するほどの大きさになるが、矢山准教授が開発している冷凍機は2、3畳分のスペースに収まるサイズになるという。この取り組みは独立行政法人科学技術振興機構の05年度大学発ベンチャー創出推進事業に採択されており、05年度から3年間で事業化するため準備を進めている。最終年度となる今期末までに事業会社を設立する予定で、コンサルタントの武石誠司さんが事業化推進担当としてプロジェクトに参加、会社設立時には武石さんが代表者となって事業を進めていく。
 武石さんは会社設立に関して「ハードを売るビジネスなので運転資金が大きくなる。最低でも資本金3,000万円ほどでスタートしたいので、基本的にはベンチャーキャピタルなどのスポンサーを見つけて会社を興す形になるだろう」と語っている。既に国内大手メーカーから販売代理の申し入れも来ているというが、「主な販売先は研究機関や大学などに限られるため、受注生産・直売の体制でも可能」との考えだ。初年度は、無冷媒希釈冷凍機1、2台を販売し年商5,000万円を目指す。