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CO2分離・回収装置を製品化 JCCL


週刊経済2024年6月19日発行号

福岡市、NEDOなどの支援で

九州大学発スタートアップの㈱JCCL(福岡市西区九大新町、梅原俊志代表取締役CEO)は5月24日、CO分離・回収装置の製品化に成功したことを発表した。
製品化したのは、CO分離膜性能評価装置の「VSS1」及び固体吸収剤によるCO回収装置の「VPSA1」。九州大学工学研究院の星野友教授の特許技術をコア技術とし、福岡市をはじめとする公的機関からの支援・共同研究を経て、JCCLが完成させた。「VSS1」は、CO分離膜に調湿されたCO含有ガスを流し、透過側を減圧、蒸気供給することで膜の性能を評価する装置。「VPSA1」は、調湿されたCO含有ガスを固体吸着剤に供給してCOを吸収させ、相対湿度が自動制御された減圧蒸気を定量供給することで、1日に2㎏程度のCOを97%以上の濃度に濃縮・回収できる装置。発電や自動車などの製造で排出されるCOを回収するだけでなく、それを燃料や樹脂、農業用、ドライアイスや炭酸水などに活用できる。同社によると、COの脱着に減圧蒸気を用いるほか、分離材料と組み合わせることで、既存のプロセスに比べて最大4分の1程度のコストでCOを回収することができるという。製品化までには約2年を要し、福岡市の研究開発型スタートアップ成長支援事業や、NEDO、JAXA、文部科学省などの機関・企業との共同事業や支援を経て完成した。販売希望価格は5千万円で、商社などを通じて販売を進めていく。
九州大学の石橋達朗総長は「産学官民の連携によるベンチャー支援体制で、本学の研究成果が社会実装につながったことを嬉しく思う。製品が寄与する脱炭素は、優先課題の一つ」とコメント。梅原CEOは「コア技術は星野友教授の長年の研究によるもので、星野教授にもCTOとして参画していただいている。特許を武器にしたCO吸収剤をグローバルスタンダードにしていきたい」、高島宗一郎市長は「今回のJCCLの装置は、コストが安く競争力があり、世界のCO削減に大きく寄与することを期待している。市のスタートアップ支援では『高さ』を求めることと、ソーシャルインパクトを二本柱としているが、今回の製品はその両方を狙うことができる。さらなる飛躍を期待している」とコメントした。