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乗務員不足への対応、沿線まちづくりなど本格化 西日本鉄道


週刊経済2023年12月26日発行号

雑餉隈―春日原間の桜並木駅は来春開業

西日本鉄道㈱(福岡市博多区博多駅前3丁目)の林田浩一社長は、ふくおか経済新年号インタビューに応じ、2023年について、「都市間輸送の高速バス需要が回復する一方で、コロナ前からの課題である『乗務員不足』が深刻化している」としながら、「〝持続可能な公共交通〟を〝地に足をつけて積み上げる年〟にしていきたい」と抱負を述べた。主なやり取りは次の通り。
―2023年を振り返って。
林田 コロナの5類移行は、ウイルスが弱毒化している空気感の中でも行動制限を続けてきた日本人にとって、国からのお墨付きを得た形になり、一気に正常化に向かったことを象徴する1年だった。
―鉄道、バスの回復状況は。
林田 私たちの強みである近距離輸送の鉄道・バスについては、依然として普段使いの需要が戻りきれていない。鉄道に関しては通勤、通学も9割近くまで回復しており、月によってはコロナ前の水準を超える時も出てきている。バスは通学でも8割程度までの回復と、他のモビリティの普及が近距離輸送に影響を及ぼしているだろう。都市間輸送の高速バスについては需要が急速に回復してきているものの、それに伴ってコロナ前からの課題でもある「乗務員不足」が目立ち始めている。高速バスに乗務員を投入すると路線バスの乗務員が確保できないというジレンマに悩まされた1年でもあった。
―「(仮称)新福岡ビル」の完成が近づいている。
林田 23年10月に鉄骨の組み上げが終了し、下の階層から仕上げの工事を進めている。以前は3棟のビルが立っていた場所で、いざ組み上がると迫力を感じる。この大型プロジェクトの完遂は大きな命題、開業に向けて着々と準備を進めていく。
天神のまちの象徴になる施設を目指す上でも、「創造交差点」というコンセプトにふさわしい〝中身〟をつくっていかなければならない。未来を創造していくような付加価値の高いビジネスを手掛けている企業に入居してもらうことも私たちの使命だと思っている。
―「(仮称)CIC Fukuoka」の開設が決定した。
林田 22年から検討を進めていたCIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)のイノベーションキャンパスが正式に開設することとなった。スカイロビーの7階に入居予定で、プライベートオフィスやコワーキングスペース、会議室、アメニティスペースなどを計画している。また、CICの姉妹組織の非営利団体「Venture Cafe」と共同し、「(仮称)Venture Cafe Fukuoka(ベンチャーカフェフクオカ)」を24年秋に立ち上げる。誰もが気軽に参加可能なプログラムを天神エリアで毎週開催する予定。ビル開業後は6階のスカイロビーでプログラムを実施し、イノベーションを生み出すコミュニティの創出を担っていきたい。
―24年のトピックスは。
林田 鉄道会社として、沿線のまちづくりも重要な使命のひとつと考えている。22年8月に高架化した天神大牟田線雑餉隈駅〜下大利駅間では高架下エリアの利活用計画を煮詰めている段階。特に大野城市は開発にとても熱心で、高架下とその周辺も巻き込んだまちづくりについて議論を進めている。雑餉隈駅〜春日原駅間に新設する「桜並木駅」は今年春に開業する見通し。
また、西鉄柳川駅では県の事業で堀割を駅西口まで引き込む工事が進められ、当社でもそれに合わせてにぎわい施設等の整備を進めていく予定。
―24年はどのような年にしたいか。
林田 来年は辰年、「昇り龍のように成長する年」と言いたいところだが、一時的な勢いではなく、長期的に「持続可能な公共交通」をつくり上げる「地に足をつけて積み上げる年」にしていきたい。世の中でもライドシェア含め、次世代のモビリティ関係の議論が活発になるだろう。地域の足を守る会社として、実質的な取り組みを着実に進めることで、持続可能な公共交通体系の構築に向けた機運を高めていきたい。